【相続だよりVol.09】令和5年度税制改正大綱における相続税・贈与税について
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税理士法人リライト
塩田 拓
2023-07-31
2022年12月16日(金)に、自由民主党より「令和5年度税制改正大綱」が公表されました。
今回の税制改正大綱には、相続や贈与といった資産税に関する具体的な内容が含まれており、今後の相続に関する申告業務や対策業務(コンサルティング)に大きな影響を及ぼすものであると推察されます。
そこで今回は、当該資料を通じて、具体的な改正内容について知り、お客様への対応や業務内容がどのように変化するのかを、知っていただければと思います。
1:税制改正内資産税関連の本文
以下は、令和5年度税制改正大綱に記載されている内容の一部となります。今回、資産税関連について改正を加えることになった背景について書かれています。
■以下引用
高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより⾼齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。
⾼齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。
一方、相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。⾼齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない。
このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくことが重要である。わが国では、相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており、贈与税は、相続税の累進回避を防⽌する観点から⾼い税率が設定されている。
このため、将来の相続財産が比較的少ない層にとっては、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある一方で、相当に高額な相続財産を有する層にとっては、財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能となっている。
今後、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより⼀体的に捉えて課税する観点から、現⾏の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり⽅を⾒直すなど、格差の固定化防⽌等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中⽴的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。
あわせて、経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では、家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防⽌等の観点を踏まえ、不断の⾒直しを⾏っていく必要がある。(令和5年度与党税制改正⼤綱より抜粋)
このように、政府与党の考え方としては、高齢世帯に偏る資産をより早い段階で若い世代へ移転することで、経済の活性化を図ろうとしています。
そのため、資産税の中でも特に贈与税に関する内容について、資産の早期移転につながるような改正となっています。
原則として、第3者へ貸している土地の方が、自身で使用する場合よりも評価額が低くなります。ゆえに、相続対策として賃貸マンション購入が良いと言われているのです。
しかし、必ずしも相続対策になるとは限らないので、よく検討してから判断する必要があります。
2:税制改正の具体的な内容
ここからは、今回の税制改正の具体的な内容について触れていきます。
特に贈与税に関する内容の改正が多いため、相続対策を考えているお客様へのコンサルティング等について、今後取るべき行動や言動が大きく変わってきますので、ご注意ください。
2-1:生前贈与の3年内加算を7年内加算へ
これまでは、相続税の申告において亡くなった日以前3年以内に贈与した財産に関しては、相続する財産も加算して相続税を計算する(相続財産に持ち戻す)ことになっていました。
しかし、令和6年1月1日以降の贈与に関しては、その持ち戻しの期間を3年から7年に延長されます。ただし、この日以降全ての贈与について7年間の加算が適用されるわけではなく、段階的に7年間の持ち戻しとなります。具体的には、以下のように加算期間が変動していきます。
・2028年5月1日死亡の場合…2024年1月1日~2028年5月1日
・2030年7月1日死亡の場合…2024年1月1日~2030年7月1日
・2034年9月1日死亡の場合…2027年9月1日~2034年9月1日
また、この延長された4年間の贈与に関しては、総額100万円までは相続財産へ持ち戻さなくてもよいことになりました。
この改正により、相続財産への持ち戻しを回避するための早期の贈与が推進されるものと思われます。比較的若い世代(50~70歳)からの贈与の提案等を通じて、将来の相続への意識の向上や、財産の圧縮・節税等への意識の向上等を進めていくことが大切です。
2-2:相続時精算課税の控除枠の拡張
これまでの相続時精算課税制度では、暦年贈与の非課税枠110万円が使えなくなる代わりに、総額2500万円までの贈与であれば非課税となっていました。しかし、今回の改正で、令和6年1月1日以降の贈与からは、現行の2500万円の非課税枠とは別枠で、年間110万円の基礎控除枠が新設されます。
従って、相続時精算課税制度を適用しながら、暦年贈与と同じことをすることが可能となります。
そのため、相続時精算課税制度を適用して2500万円贈与をした翌年に、100万円の贈与をするといったようなことを非課税で行うことが可能となります。ただし、あくまでも暦年贈与とは別物の控除枠であるため、非課税額を超えた部分についての贈与税率は、一律20%に変わりはありません。
また、相続税の計算時において加算される金額が、贈与財産の価額から、過去の基礎控除額(年間110万円)を控除した後の金額へと変更されます。
具体的には、以下のようになります。
・2030年1月1日、相続時精算課税制度を適用し2500万円贈与
→非課税枠2500万円、贈与税0円
・2031年3月1日、110万円贈与
→基礎控除額110万円、贈与税0円
・2032年5月1日、110万円贈与
→基礎控除額110万円、贈与税0円
・2033年4月1日死亡
→相続財産への持ち戻し
財産(2500万円+110万円+110万円)-基礎控除(110万円×2)=2500万円
これにより、相続時精算課税制度を適用した贈与の節税効果が向上するため、お客様への提案もしやすくなるものと思われます。
比較的金額の大きい財産の贈与を検討している方にとっては、その贈与をした後にも節税対策を図ることができるため、お客様の相続時精算課税制度を適用した贈与のハードルも低くなってくるものと思われます。
2-3:教育資金や結婚資金等の一括贈与の見直しと延長
・教育資金の一括贈与に係る非課税措置
適用期間を3年延長し、契約期間中に贈与者が死亡した場合で、贈与者の相続税の課税価格が5億円を超える場合は、受贈者の年齢に関わらず残高を相続財産へ加算することになりました。
・結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置
適用期間を2年延長することとなりました。
3:今後の改正検討課題について
以前にニュースにもなりましたが、マンションの相続税評価について、見直しがされるのではないかと囁かれています。現状の相続税評価と市場価格が乖離してきていることもあり、今後、不動産の購入による節税効果が減少するような改正が行われる可能性が考えられます。
いかかでしたでしょうか。
今回の改正だけでも、お客様への節税提案や相続対策の提案の仕方が大きく変わってくると思われますので、ご注意くださ
い。また、これらの改正の内容に関しても、まだまだ触れられていない部分(実務に関する内容等)がありますので、それらの詳細に関しても、判明次第、随時共有させていただきますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
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