【相続だよりVol.18】相続基礎知識を学ぼう(配偶者居住権って何?)
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税理士法人リライト
塩田 拓
2024-09-24
配偶者居住権って何?
配偶者居住権とは、被相続人が所有していた建物に被相続人の配偶者が住み続けられる権利のことを言い、令和2年4月1日より制度が施行されました。従来の所有権が細分化され、配偶者居住権と、配偶者居住権の負担付き所有権と別々に、相続及び登記が可能となります。配偶者居住権の効力は強く、第三者から立ち退きを求められても、対抗することが可能です。
配偶者居住権制度の背景
高齢化及び平均寿命の延伸により、夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が長期間にわたり生活を継続する場合が多くなっています。この場合、配偶者が住み慣れた住居を今後の生活のために確保し、かつ老後の生活資金も確保したいと考えるケースが多く出てきます。従来の分割方法では、相続人間の公平性を考えると、自宅と預金両方を相続することが難しいケースが多かったため、自宅の権利そのものを分割することで、公平な分割をするだけでなく、その後の生活資金も確保することが可能となります。
配偶者居住権設定物件に関する取扱い
配偶者居住権の設定された建物に関する費用負担等は以下になります。
・売却代金…所有者 ・固定資産税…原則所有者(配偶者に請求可能)
・水道光熱費…配偶者 ・増築等価値を増加させる有益費…所有者
・台風等での特別な支出…所有者
配偶者居住権設定における相続税等について
配偶者居住権の設定時は、相続税の課税対象となりますが、設定後に配偶者が亡くなった際は、亡くなった時点で配偶者居住権は消滅し、通常の所有権に戻ります。この時、相続税は課税されません。ただし、設定後生前に配偶者居住権を放棄した場合は、所有者に対して贈与税が課税されます。
配偶者短期居住権
配偶者居住権に併せて、配偶者短期居住権も新設されました。基本的な内容は配偶者居住権と同じですが、配偶者短期居住権は条件を満たせば自動的に発生するため、登記する事は出来ません。従って、第三者に対抗することは出来ません。また、最低6ヶ月間の期限があり、期限後は居住権が消滅します。なお、財産価値は無いものとみなされるため、相続税は課されません。
上記の場合、配偶者は自身が住んでいる不動産を相続すると、それだけで法定相続分を超えてしまい、預貯金を相続することが難しくなってしまいます。一方、子は不動産を相続するのが難しく、預貯金だけでは1,000万円しか相続できず、公平性に欠けます。親子の関係性が良く、話し合いでまとまるのであれば良いのですが、親子間の意見が折り合わない場合は、自宅の売却も考えなければならない等、配偶者の負担がかなり大きいものになる事も考えられます。
そこで、土地と建物の権利を分けることで、住み続ける権利を配偶者が、所有する権利を子が相続する事ができ、なおかつ配偶者も預貯金を相続することができ、親子間で納得のいく相続ができます。もちろん配偶者は、今後も自宅に住み続けることができ、所有権は子にあるため、将来の売却代金は直接、子のものとなります。また、配偶者が亡くなった際には、配偶者居住権は自動的に消滅し、相続税も課されません。
参考文献
・配偶者居住権とは 活用すべきケースや要件、手続き、相談先を紹介|相続会議
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