【相続だよりVol.22】相続基礎知識を学ぼう(成年後見制度とは?)
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税理士法人リライト
塩田 拓
2024-11-26

成年後見制度とは?
成年後見制度とは、認知症や知的障害等によって判断能力が低下した人が所有する財産の管理等を、家庭裁判所が認定した代理人(成年後見人)が行い保護するための制度です。財産管理や日常生活の中での契約(介護・医療等)を成年後見人が行うことで、適切な契約を結び、不当な契約や詐欺等に遭うことを未然に防ぐことが可能です。
成年後見制度の種類
成年後見制度では、対象者の判断能力の度合いによって、適用されるタイプが変わります。
区分 | 対象者 |
援助者 |
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補助 | 判断能力が不十分な人 | 補助人 | 監督人を選任する必要がある |
保佐 | 判断能力が著しく不十分な人 | 保佐人 | |
後見 | 判断能力が欠けている状態が通常の人 | 成年後見人 | |
任意後見 | 本人の判断能力が不十分になった時に、本人が予め結んでおいた任意後見契約に従って任意後見人が本人を援助する |
補助とは
普通の人よりも判断能力は多少不足するものの、日常生活等には支障がない場合に適用されます。不足しているとはいえ、判断能力自体はあるため、申立て時に本人の同意が必要となります。補助人が選定されても、基本的にはすべてを本人が行い、不動産売買等の一部の重要な取引について援助を受けます。
保佐とは
認知症等で判断能力の不足は認められるものの、日常生活は自身でできると判断された場合に適用されます。日常生活に関する簡易的な事は自身で行えますが、契約や訴訟といった契約行為については、保佐人の援助を受けます。
後見とは
重度の認知症や精神障害等により、本人に判断能力がないものと判断された場合に適用されます。法律行為はもちろん、日常生活に関する事にまで、成年後見人が管理等をします。
援助者に与えられる権限
援助者に選定されると、本人の取引や契約等に対する権限を与えられます。区分によって、与えられる権限の種類及び効力が異なります。
- 代理権
不動産の売買契約や預貯金の解約等の財産に関する重要な契約や取引を、本人に代わって行うことができる権限。
- 同意権
不動産の売買契約や預貯金の解約等の財産に関する重要な契約や取引を本人が行う場合は、代理人の同意が必要となる権限。
- 取引権
本人が代理人の同意を得ないで契約や取引を行った場合に、その取引や契約を取り消すことができる権限。
補助人の場合
- 代理権:家庭裁判所が認めるものについてのみ、代理権が付与される。
- 同意権:民法13条1項に定められた法律行為の内、家庭裁判所が認めたもののみ、同意権が付与される。
- 取消権:上記の同意権が認められた行為のみに対し、取消権が付与される。
保佐人の場合
- 代理権:家庭裁判所が認めるものについてのみ、代理権が付与される。
- 同意権:民法13条1項に定められた法律行為について、同意権が付与される。
- 取消権:上記の同意権が認められた行為のみに対し、取消権が付与されます。
成年後見人の場合
- 代理権:財産に関するすべての法律行為について、代理権が付与される。
- 同意権:そもそも本人の判断能力が無いため、同意権は存在しない。
- 取消権:日常生活に関する行為以外のすべての法律行為について、取消権が付与される。
成年後見制度のメリット
成年後見制度を適用することで被るデメリットは、以下が考えられます。
申し立て費用がかかる
家庭裁判所への申立て時に、収入印紙代・登記費用・診断書・鑑定費用といった費用が発生します。場合によっては、合計で数十万円程度の費用がかかることもあります。この費用は、申立人の負担となります。
成年後見人が申立ての通りになるとは限らない
成年後見人を申し立てる際に、成年後見人の候補者を記載することができます。しかし、成年後見人は家庭裁判所が選定するため、たとえ家族を候補者に記載したとしても、家庭裁判所が第3者(専門家)を成年後見人に選定する可能性があります。この場合でも、申立てを取り下げることは出来ず、解任するにも相当な理由が必要となります。
成年後見人への報酬は一生涯発生し続ける
成年後見人に選定された人は、報酬を請求することが可能です。その金額は、家庭裁判所が判断します。家族が成年後見人の場合は報酬を請求するかは自由ですが、第3者の専門家が成年後見人に選定された場合は、必ず報酬を支払うことになります。また、家族が成年後見人に選定された場合でも、後見監督人(成年後見人を監督する人)が選定された場合は、後見監督人に対しても報酬を支払う必要性があります。
途中で成年後見契約を解消することは出来ない
一度成年後見制度を適用すると、本人が亡くなるまでは成年後見を家族の意思で解消することは出来ません。そのため、成年後見をして所有不動産の処分等の目的を達成したとしても、その後は本人が亡くなるまで成年後見が続くため、報酬等の費用面においてもデメリットです。
財産の使用等が大きく制限される
成年後見制度を適用すると、本人の財産は管理・維持を徹底されるため、資産活用や相続対策といったことが一切行えなくなります。入学祝いや結婚祝い、子や孫の学費といったものを渡すこともできません。あくまでも、本人にとって必要なことにしか本人の財産を使用できなくなります。
参考文献
・成年後見制度とは?法定後見・任意後見の違いや手続きの流れ|LIFULL介護
・成年後見制度とは?わかりやすく簡単に解説!|いちばんやさしい終活ガイド
・補助人とは?成年後見人や保佐人との違いや権限について|ベンチャーサポート相続税理士法人
・保佐人の権限やできること7つ【できないことも解説】|ベンチャーサポート相続税理士法人
・成年後見人の持つ代理権とは?保佐人や補助人との違いも解説!|円満相続ラボ
・成年後見人のデメリットは5つあるので把握しておこう|みかち司法書士事務所
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